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2018.06.30

恒久的施設(PE)の定義の見直しについて

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1.はじめに
平成30年度税制改正で、恒久的施設(PE:Permanent Establishment)の定義が見直されました。今回は、そのうちで、いわゆる「代理人PE」の定義の見直しについて取り上げます。


2.現行の恒久的施設(PE)とは
PEとは、事業を行う一定の場所(支店等)であって、企業がその事業の全部又は一部を行
っている場所をいいます。外国法人が日本国内で事業を行う場合、日本国内にその企業のPEを持たなければ、その企業の事業所得について日本では課税されません(「PEなければ課税なし」)。

PEは、次の3つの種類に区分されています。
1) 支店PE(支店、事務所、工場等)
2) 建設PE(1年超の建設工事現場等)
3) 代理人PE(常習代理人、在庫保有代理人、注文取得代理人)
※ただし、上記に掲げる者からは独立代理人(その者がその事業に係る業務を外国法人に対して独立して行い、かつ、通常の方法により行う場合における該当者)に該当する者は除かれます。


3.代理人PEに係る従来の問題点
従前、PEに該当しない代理人とコミッショネア契約を締結し日本で活動させることで、
課税を人為的に回避する手法が問題になっていました。
 コミッショネア取引とは、代理人が自らの名義で販売を行いつつ、取引による損益は委託者に帰属させ、代理人は手数料をもらう取引を言います。コミッショネア取引では、商品の所有権は代理人ではなく委託者にあるため、所得源泉は販売ではなく役務提供(販売行為)による報酬となります。
よって、通常のバイセル(buy-sell)と呼ばれる販売形態と比較すると、在庫リスク等を負うことがないため、コミッショネア取引に基づく所得は少なくなり、結果、法人税を圧縮することも可能になります。


4.改正点
BEPS報告書やOECDモデル条約の改正を踏まえ、今回の改正で、以下の見直しがありま
した。


① 代理人PEの範囲に、「非居住者等のために、その事業に関し反復して契約を締結し、又は一定の契約の締結のために反復して主要な役割を果たす者で、これらの契約が非居住者等の資産の所有権の移転等に関する契約である場合における当該者」を追加


② 従来は代理人PEとされなかった独立代理人の範囲から、「専ら又は主として一又は二以上の自己と密接に関連する者(持分割合50%超の関係にある者等)に代わって行動する者」を除外
よって、独立代理人に該当する場合には、自己と密接に関連する者以外の代理人も務めていなければならないと定められました。


5.おわりに
今回のニュースでは代理人PEの定義の見直しを取り上げました。なお、今回の解説も概略的な内容を紹介する目的で作成されたものですので、専門家としてのアドバイスは含まれておりません。個別に専門家からのアドバイスを受けることなく、本情報を基に判断し行動されることのないようお願い申し上げます。ご不明な点がございましたら、お気軽に弊社までご相談ください。


(参考資料)
財務省ホームページ
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2018/30taikou_05.htm
(平成30年6月26日アクセス)