1.はじめに
平成29年12月14日に、政府与党(自由民主党・公明党)による「平成30年度税制改正大綱、(以下、大綱)」が公表され、平成29年12月22日に大綱が閣議決定されました。
今回は、その中でも法人課税、国際課税及び個人所得課税に焦点を絞り、その改正点の概要についてご紹介します。
なお、今後の国会における法案審議の過程において、内容に修正等の変更がある可能性がありますのでご留意ください。
2. 法人課税
賃上げ・生産性向上のための税制と題打ち、税額控除などの適用に関して見直しが行われました。以下主要なポイントを紹介させていただきます。
(a) 所得拡大税制の見直し
現行の賃金の増加のみを対象とし税額控除を行う取り扱いに代わり、賃金の増加及び新たに設備投資を一定割合以上行うといった要件が追加され、給与支給増加額の15%の税額控除ができる制度へと見直されています。さらに教育訓練費の増加要件を満たす場合には、20%の税額控除が認められることとなります(適用年度の法人税額の20%を上限とする。)。
中小企業に関しては、一定の要件を満たす場合に、給与支給増加額の最大25%の税額控除が認められる制度になります。(適用年度の法人税額の20%を上限とする。)
(b) 情報連携投資等の促進に係る税制の創設
「生産性向上の実現のための臨時措置法(仮称)」における革新的データ活用計画(仮称)の認定を受け、同計画に従ってソフトウエアを新設し、又は増設した設備につき事業の用に供した場合、設備等の取得価額について特別償却(30%)又は税額控除(5%あるいは3%)ができる制度が創設されています。
(c) 租税特別措置の適用要件の見直し
平均給与要件又は設備投資要件のいずれにも該当しない大企業については、研究開発税制その他一定の税額控除が適用できないこととされています。
3. 個人所得課税
今回の税制改正にて、一番の論点でもある個人所得課税の見直しについて、以下ポイントを紹介させていただきます。
(a) 給与所得控除
通常の会社員の必要経費を自動計算するための項目とされている、給与所得控除額ですが、今回一律10万円引き下げの見直しが行われています。 また、給与所得控除の上限額が適用される給与等の収入金額を850万円として、その上限額が195万円に引き下げられます。
(b) 基礎控除
給与所得控除の引き下げがあるものの、基礎控除については、控除額が一律10万円引き上げられることとなります。しかし合計所得金額が2,400万円を超える個人については、その合計所得金額に応じ控除額が減少していき、合計所得金額が2,500万円を超える個人については基礎控除の適用ができないことになります。
4. 国際課税 - 恒久的施設(PE)関連規定の見直し
日本に進出する外国企業等に対する課税の範囲を決定する「恒久的施設」の範囲について、OECDモデル租税条約に沿った租税回避を防止するために以下の見直しが行われています。
① いわゆる「代理人PE」について、その範囲に、外国法人等の資産の所有権の移転等に関連する契約の締結に関する業務を行う者が追加されます。
② 「独立代理人」の範囲から、専ら又は主として一又は二以上の自己と密接に関連する者に代わって行動する者が除外されます。
③ 保管、展示、引渡しなどの特定の活動を行う一定の場所等は、PEに含まれないものとされます。ただし、その活動が外国法人等の事業の遂行にとって準備的又は補助的な機能を有する場合に限られています。
④ いわゆる「建設PE」の期間要件について、PE認定回避を目的として契約期間を分割した場合には、分割された期間を合計して判定を行うこととされます。
5.おわりに
今回は、「平成30年度税制改正」について改正のポイントについてご説明しました。 なお、今回の解説も、概略的な内容を紹介する目的で作成されたものですので、専門家としてのアドバイスは含まれておりません。個別に専門家からのアドバイスを受けることなく、本情報を基に判断し行動されることのないようお願い申し上げます。
ご不明な点等ございましたら、お気軽に弊社までご相談下さい。
(参考資料)
平成30年度税制改正大綱