1. はじめに
平成29年度税制改正により、配偶者控除及び配偶者特別控除の取扱が改正されました。これに伴い、平成30年1月以降の毎月(日)の給与等の支払の際の源泉徴収税額の計算方法が変わります。この改正が今年の年末調整に影響はありませんが、企業の皆様は「平成30年分 扶養控除等(異動)申告書」を従業員へ配布している頃ではないでしょうか。この様式も改正に伴い変更されますので、企業側は改正された要件等を正しく理解し、しっかりサポートが出来るよう、今回のニュースでは配偶者控除・配偶者特別控除の改正について取り上げたいと思います。
2. 改正の背景
現行の内容に基づく場合、「103万円」というのが一つの壁となっているかと思います。年末調整の時期になると、配偶者のパート収入を103万円以内に抑えるよう、労働時間の調整を行う方も多いかと思います。
今後は、このような就業調整を行わなくて良いように、配偶者の所得制限の見直しを行うものとなっています。また今回の給与年収 150万円という水準は、東京都の最低賃金である958円の時給で1日6時間を週5日勤務したと仮定した場合の給与年収(約140万円)を上回るものとなっています。
一方で、配偶者控除について逓減・消滅の所得制限を設定した趣旨は、税収中立の確保にあります。そこで、配偶者控除について所得制限を加え、この措置による増税分で減税分の補填を図ったものです。
3. 改正の内容
(1) 配偶者控除
これまで「配偶者控除」を受ける際、給与所得者の合計所得金額は問われませんでした。今回の改正で、給与所得者の合計所得金額が1,000万円を超える場合(給与のみの場合は、年収1,220万円)には、「配偶者控除」の適用を受ける事ができないこととなりました。また給与所得者の所得に応じ、配偶者控除の控除を受けられる額が3段階で減額(満額、3分の2、3分の1と逓減)することになりました。
(2) 配偶者特別控除
上記の「配偶者控除」を受けられない場合であっても、一定の所得までは段階的に控除が受けられるこの「配偶者特別控除」の枠が拡大されました。現行では配偶者の所得金額の上限は76万円未満でしたが、今回の改正で123万円以下に拡大され、適用を受けられやすくなりました。
4. 改正の懸念点
いわゆる103万円の壁は配偶者特別控除によって解消しているはずですが、社会保険上の扶養親族の問題もあり、配偶者の就労調整上の大きな壁は「130万円」といわれています。これは、パートタイマー等で働いている者が社会保険の被扶養者になれるかどうかの基準金額です。
したがって、税制上で配偶者控除・配偶者特別控除の措置をしても社会保険の壁を解決しなくては実際上の解決にはならないということになります。
5. 適用時期
当該改正は、平成30年分以後の所得税について適用されます。
源泉徴収義務者の下における改正後の源泉徴収事務については、平成30年1月1日以後に支払うべき給与等から改正後の各種控除申告書の提出を受けて行うことになります。
6. おわりに
今回のニュースでは、平成29年度税制改正である配偶者控除・配偶者特別控除について取り上げました。
当該改正が非常に複雑で難解だということがお分かりいただけたかと思います。今回の改正で影響を受ける範囲が事前にはっきりすることが出来たら、何を行うべきかという実務の計画も立てやすくなるかと思います。
なお、今回の解説も概略的な内容を紹介する目的で作成されたものですので、専門家としてのアドバイスは含まれておりません。個別に専門家からのアドバイスを受けることなく、本情報を基に判断し行動されることのないようお願い申し上げます。
ご不明な点がございましたら、お気軽に弊社までご相談ください。
(参考資料)
https://www.nta.go.jp/gensen/haigusya/index.htm
平成29年10月25日アクセス