1. はじめに
香港は1997年7月1日にイギリスから中華人民共和国(以下“中国”)へと返還されましたが、経済・法律・社会制度については、返還後50年間は、いわゆる「一国二制度」の原則が適用されています。そのため、香港においては中国の税制ではなく、香港独自の課税制度が維持継続されています。そんな香港について先月のニュースでは海外進出の検討について取り上げましたが、今回は、香港の会計・税務について取り上げたいと思います。
香港は1997年7月1日にイギリスから中華人民共和国(以下“中国”)へと返還されましたが、経済・法律・社会制度については、返還後50年間は、いわゆる「一国二制度」の原則が適用されています。そのため、香港においては中国の税制ではなく、香港独自の課税制度が維持継続されています。そんな香港について先月のニュースでは海外進出の検討について取り上げましたが、今回は、香港の会計・税務について取り上げたいと思います。
2. 香港の会計
● 会計制度
香港では、一般に公正妥当と認められる会計基準のもととなる法令・規則として、会社条例(Companies Ordinance : CO)があり、以下のような基本事項が規定されています。
● 会計制度
香港では、一般に公正妥当と認められる会計基準のもととなる法令・規則として、会社条例(Companies Ordinance : CO)があり、以下のような基本事項が規定されています。
1) 会計期間
すべての会社は年1回決算を行い、外部監査法人による会計監査を受けることが義務付けられています。第1回株主総会の期限が会社設立後18ヶ月以内となっているため、初年度決算も同様に設立後18ヶ月以内に行わなければなりません。
2) 会計帳簿の保存
すべての会社は、会計帳簿を適切に作成し、事業年度の末日から7年間保存しなければなりません。
すべての会社は、会計帳簿を適切に作成し、事業年度の末日から7年間保存しなければなりません。
3) 言語・通貨
記帳通貨は、原則として主要取引通貨(香港ドル)を用います。ただし、日本では必ず円ベースで記帳することが求められていますが、香港では香港ドル以外の国際流通通貨での記帳管理も可能です。例えば、米ドル建ての取引がほとんどを占める場合には、原則として米ドルベースで記帳することとなります。
●会計基準
香港における会計基準については、会社条例の中に具体的な規定がないため、実務上、香港公認会計士協会が公表している次の基準に従うこととされています。
・香港財務報告基準(HKFRS)および、香港会計基準(HKAS)
・中小企業財務報告基準(Small and Medium-sized Entities Financial Reporting Framework and Financial Reporting Standard: SME-FRF&FRS)
香港会計基準は2005年1月1日より国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards : IFRSs)および国際会計基準(International Accounting Standards : IASs)(以下、合わせて「IFRSs」)にすべてをフルコンバージェンスしたため、実質的にはIFRSsと同一の会計基準となっています。
●会計監査
会社条例よって、すべての会社は、上場・非上場を問わず、財務諸表の監査が義務付けられています。
会社条例よって、すべての会社は、上場・非上場を問わず、財務諸表の監査が義務付けられています。
3. 香港の税制
タックスヘイブン国の一つとして知られる香港税制の特徴は、日本と比べて簡易な税制で低税率であることが挙げられます。
タックスヘイブン国の一つとして知られる香港税制の特徴は、日本と比べて簡易な税制で低税率であることが挙げられます。
1) 簡易な税制
日本では法人税や所得税、相続税などどの本法だけでもかなりの分量になる上に、租税特別措置法や政令、税務当局による通達や判例などが一体となり運営されるため、結果として適用が非常に難解となっています。一方、香港はといえば、地方税や消費税、住民税に該当する税金がなく、税の種類自体が少なくなっています。
2) 非課税方式による二重課税の排除
課税対象となるのはオンショア所得(香港域内源泉所得)のみとなり、オフショア所得(香港域外で得た所得)は原則としてすべて非課税扱いとなります。また、受取配当金について、個人および法人に課税されることはありません。
3) 源泉徴収制度
香港では、非居住者といったごく一部の例外(非居住者へのロイヤリティの支払等)除いて、源泉徴収制度は採用していません。
香港では、非居住者といったごく一部の例外(非居住者へのロイヤリティの支払等)除いて、源泉徴収制度は採用していません。
4. タックスヘイブン対策税制
自社の課税負担を減らす目的のため、さまざまな先進国の企業が低税率国で利益を計上しようと考えます。その低税率国の1つが香港です。しかし、国の立場に立って考えたとき、低税率国を利用することで、自国の税収が減少するということになってしまします。そのような企業の不当な税金逃れを抑制するため、日本でもタックスヘイブン対策税制という制度を設けています。詳しくは2016年6月と2017年1月のニュースをご確認下さい。
5. 移転価格税制
移転価格税制とは、タックスヘイブン対策税制と同様に、所得を他国に移転することを規制する目的で定められた税制です。2009年12月に移転価格に関するガイドラインが公布されました。香港における移転価格税制は、OECDの移転価格のガイドラインを踏襲しており、海外関連者との取引が、通常の第三者や独立企業間取引に用いられる価格と比較して不当に低額もしくは高額ということで、利益の金額が減少してしまった際にこの減少した分の利益額を認定利益として追徴課税するというものです。
6. おわりに
今回は「海外の会計・税務・労務―香港編」についてご説明しました。
香港にはその特徴を活かした様々なビジネスメリットがあります。弊社はお客様に合ったスキーム提供から進出後の会計税務まで全てをサポートしております。香港を活用したビジネスを含め香港にご関心がありましたら、是非弊社までご相談下さい。
なお、今回の解説も、概略的な内容を紹介する目的で作成されたものですので、専門家としてのアドバイスは含まれておりません。専門家からのアドバイスを受けることなく、本情報を基に判断し行動されることのないようお願い申し上げます。
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なお、今回の解説も、概略的な内容を紹介する目的で作成されたものですので、専門家としてのアドバイスは含まれておりません。専門家からのアドバイスを受けることなく、本情報を基に判断し行動されることのないようお願い申し上げます。