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2017.01.31

平成29年度税制改正について―外国子会社合算税制

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1. はじめに
平成28年12月8日に、政府与党(自由民主党・公明党)による「平成29年度税制改正大綱、(以下、大綱)」が公表され、平成28年12月22日に大綱が閣議決定されました。
今回は、企業の海外における事業展開を阻害することなく、国際的な租税回避に、より効果的に対応することを目的とした、外国子会社合算税制(以下、タックスヘイブン対策税制)の見直しについてご紹介します。
なお、今後の国会における法案審議の過程において、内容に修正等の変更がある可能性がありますのでご留意ください。


2. 現行の取扱い及びその問題点
現行制度の概要につきましては、平成28年6月30日のニュースにて配信しておりますが、合算課税の対象となる外国会社を判定するうえで、租税負担割合が「トリガー税率(20%)」以上であれば、タックスヘイブン対策税制の合算対象とはならないこととなります。これにより、1%でもトリガー税率を上回る租税負担を有する場合には、経済実態を伴わない所得であっても、合算の対象とならない「アンダ―インクルージョン」という問題点が指摘されています。反対に、経済実態は伴っている所得について、合算対象となってしまう「オバーインクルージョン」についても、同様の指摘がなされています。


3. 大綱の概要
今回の大綱では、BEPSプロジェクトの基本を踏襲する形で、従来から指摘されている問題点及び外国子会社を通じた税回避行為を抑制すること目的とする見直しが下記の通り、行われることとなります。

(a) 合算対象とされる外国法人の判定方法等の見直し

 ① トリガー税率の廃止

外国関係会社が特定外国子会社等に該当するかどうかを判定するための租税負担割合基準が廃止となります。


 ② 外国関係会社の判定時における、持分割合の計算方法の見直し

外国関係会社の判定における間接保有割合の計算において、内国法人との間に50%超の株式等の保有を通じた連鎖関係がある外国法人の判定対象となる外国法人に対する持分割合に基づいて算定することとなります。
  
 ③ 資本関係を有しない法人による実質支配基準の導入

実質支配基準の導入により、居住者又は内国法人が、外国法人の残余財産のおおむね全部を請求することができる等の場合には、その外国法人を外国関係会社の範囲に加えるとなります。また、その居住者又は内国法人は合算課税の対象となります。

一方で、納税者の事務負担を軽減するため、ペーパーカンパニー等を除き、当該外国関係会社の租税負担割合が20%以上であれば制度の適用が免除されるという仕組みは維持されています。


(b) 会社単位での合算課税制度の見直し

会社単位の適用除外基準について見直しを行ったうえで、制度の発動基準を「経済活動基準」に改め、そのうちいずれかを満たさない外国関係会社について、会社単位での合算課税の対象とされます。

また、実体のある航空機リース会社や製造業会社の所得が合算されないよう、各種基準(事業基準、実体基準、管理支配基準、所在地国基準又は非関連者基準)につき、一定の要件を満たすものについては、基準を満たし、合算対象とはならないこととされます。


(c) 一定所得の部分合算課税制度

経済活動基準をすべて満たす場合には、現行の資産性所得より範囲を拡大した、受動的所得が部分合算課税の対象となります。具体的には、従来の配当や利子などについて範囲の見直しを行うとともに、有価証券の貸付対価・譲渡損益、デリバティブ取引に係る損益、外国為替損益、無形資産等の使用料・譲渡損益等も合算課税の対象となります。(ただし一定要件を満たす金融子会社等については特例規定が設けられています。)

また、合算にあたり設けられている少額免除基準のうち、金額基準については、現行の1,000万円以下から、2,000万円以下に引き上げることとされています。


(d) 特定の外国関係会社に係る会社単位の合算課税制度

特定の外国関係会社として、以下該当するものは、会社単位の合算課税の対象となります。

 ① ペーパーカンパニー

主たる事業を行うに必要とされる固定設備を有しておらず、事業の管理、支配および運営を自ら行っていないもの


 ② 事実上のキャッシュボックス

総資産に対する、部分合算課税対象所得のうちの一定の所得の合計額の割合、及び、有価証券、貸付金および無形固定資産等の合計額の割合が一定割合以上のもの


 ③ ブラックリスト国所在

租税に関する情報の交換に非協力的な国等として財務大臣が指定する場所に本店等を有するもの

しかし、外国関係会社の当該事業年度の租税負担割合が30%以上である場合には、会社単位の合算課税の適用は免除されます。



4. 適用時期
上記の改正は、外国関係会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。


5.おわりに
今回は、「平成29年度税制改正―外国子会社合算税制」についてご説明しました。
なお、今回の解説も、概略的な内容を紹介する目的で作成されたものですので、専門家としてのアドバイスは含まれておりません。個別に専門家からのアドバイスを受けることなく、本情報を基に判断し行動されることのないようお願い申し上げます。
ご不明な点等ございましたら、お気軽に弊社までご相談下さい。


(参考文献)
平成29年度税制改正大綱