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2016.03.31

日独租税条約の改正に伴う企業への影響

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1.はじめに
平成27年12月17日に、日本ドイツ両政府間で「所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とドイツ連邦共和国との間の協定」(以下、新協定)の署名が行われたことが財務省より公表されています。

新協定は、現行協定を全面的に改訂するものであり日独相互の投資・経済交流を一層活性化することが期待されています。

新協定の主な内容は、以下のとおりです。


2.主な改正内容
● 事業利得(第7条)
2010年にOECDモデル租税条約が改正されたことを踏まえ,外国企業・非居住者の支店等(恒久的施設)に帰属する事業利得に対する課税について,本支店間の取引に関して独立企業原則をより厳格に適用し,本支店間の内部取引を網羅的に認識して恒久的施設に帰属する利得を計算することを規定しています。


● 配当(第10条)、利子(第11条)、使用料(第12条)
投資所得(配当,利子及び使用料)に関しては,源泉地国における課税を更に軽減又は免除する減免が以下のように拡充されます。



● 協定上の特典の濫用を防止する観点から,協定上の特典を,居住者が一定の要件を満たす適格者等である場合に限定して認める規定としています。


● 協定の適用に係る紛争の円滑な解決を図る観点から,相互協議手続に係る仲裁手続(両締約国の権限のある当局間での協議によっても解決されなかった事項につき,第三者の決定に基づき解決する手続)が新たに導入されます。


● 国際的な脱税及び租税回避行為に更に効果的に対処するために,租税に関する情報交換規定の対象となる租税及び事案を拡大するとともに,両国間で租税債権の徴収を相互に援助する仕組み(徴収共助)が導入されます。


3. 改正に伴う企業への影響
● 資本配分の検討:
現行、ドイツから日本への配当の支払をする際には、15%の源泉税率が課せられており、外国子会社配当益金不算入制度の規定が適用される場合には、当該源泉税は日本において損金不算入となり、コストとなってきました。
よって、従来配当を見合わせていたドイツ進出の日系企業、日本進出の独系企業については、メリットを享受する為に、配当を行うタイミング、組織配分(資本配分)の検討が必要となる可能性があります。


●  契約主体の見直し:
使用料課税の影響等により、日独以外に拠点を置いている持株会社と使用料に関する契約を行っている企業については、契約主体を再検討することで税務メリットを享受できる可能性があります。


● 日独投資の検討:
租税条約改定は日独双方間の投資促進・経済交流を目的としているため、日独投資への税務面での障壁が取り除かれたことにより、新規投資を再検討する機会になる可能性があります。


● 相互協議手続きに係る仲裁制度の導入:
相互協議の手続きに仲裁-規定が導入されたことにより、近年話題に上がっている移転価格税制等の国際的な二重課税の問題や税務上のトラブルについても、両国の税務当局が合意に達することができない場合に、仲裁を通じて解決することが可能とされております。 


なお、新協定により源泉所得税の計算を行う場合には、「租税条約に関する届出」を再提出する必要も考えられます。


4.適用時期
新協定は、国会の承認等の手続きを経た上で、発効することとなります。流動的な部分はありますが、過去の他の租税条約改定の適用状況を鑑みると、2017年1月以後に新協定が適用されることが予想されます。


5.おわりに
今回は、「日独租税条約の改定に伴う企業への影響」についてご説明しました。

なお、今回の解説も、概略的な内容を紹介する目的で作成されたものですので、専門家としてのアドバイスは含まれておりません。専門家からのアドバイスを受けることなく、本情報を基に判断し行動されることのないようお願い申し上げます。
ご不明な点等ございましたら、お気軽に弊社までご相談下さい。


(参考文献)
外務省ホームページ
http://www.mofa.go.jp/mofaj/index.html
財務省ホームページ
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/press_release/20151217de.htm