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2015.07.15

国境を越えた海外からのデジタルコンテンツ(電子書籍・音楽配信等)の購入等に係る消費税について

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1. はじめに
プライベートのみならず、ビジネスにおいても、電子書籍を購入されたご経験のある方がいらっしゃるかと思われます。


日本の消費税法上、現況においては、アマゾンなどの海外のネット販売を通じて購入した電子書籍等は消費税がかからない一方、国内で通信販売している電子書籍等には消費税が課されるという不公平な事態が生じています。


そのため、平成27年の税制改正において、今年10月1日から海外のネット販売を通じた電子書籍の販売等の一定の取引についても消費税の課税対象とすることになりました。


今回は、国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し(英語版:Consumption Tax Rules on Cross Boarder Digital Services)について、お話させていただきます。

 
2.基本的な考え方と改正理由
日本の消費税法上、役務の提供が消費税の課税対象となる国内取引に該当するかどうかは、役務提供者の所在地により判定されます。


例えば、電子書籍の配信という取引は、消費税法において役務の提供に分類され、一般的にサービスの提供を行った者の事務所等の所在地が国内であれば消費税はかかりますが、国外であれば消費税は課されません。これでは、国外事業者により行われる当該取引には消費税が課されない一方、国内事業者により行われる同様の取引には消費税が課され、国内外の事業者間の競争条件に歪みが生じてしまいます。


そこで、国内外の事業者間における競争条件の公平性を確保する観点から、平成27年度の税制改正において、電子書籍の配信等の取引を「電気通信利用役務の提供」と位置づけ、当該取引については、サービスの提供を受ける者の住所等により内外判定を行うことになり、平成27年10月1日から適用されることになりました。


3. 「電気通信利用役務の提供」とは?
国税庁のホームページによれば、対価を得て行われる以下のものが例示されております。


(1) インターネット等を通じて行われる電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウエア(ゲーム などの様々なアプリケーションを含みます。)の配信
(2) 顧客に、クラウド上のソフトウエアやデータベースを利用させるサービス
(3) 顧客に、クラウド上で顧客の電子データの保存を行う場所の提供を行うサービス
(4) インターネット等を通じた広告の配信・掲載
(5) インターネット上のショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス(商品の掲載料金等)
(6) インターネット上でゲームソフト等を販売する場所を利用させるサービス
(7) インターネットを介して行う宿泊予約、飲食店予約サイト(宿泊施設、飲食店等を経営する事業者から掲載料等を徴するもの)
(8) インターネットを介して行う英会話教室
(9) 電話、電子メールによる継続的なコンサルティング


なお、電話、FAX,インターネット回線の接続など、通信そのものに該当する役務の提供、又は、電気通信回線を介する行為が他の資産の譲渡等に付随して行われるものは、「電気通信利用役務の提供」に該当しませんので、内外判定基準や課税方式はこれまでと変更ありません。


国税庁の「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A」によれば、以下のような取引を「電気通信利用役務の提供」には該当しないものとして例示しております。

●電話、FAX、電報、データ伝送、インターネット回線の利用など、他者間の情報の伝達を単に媒介するもの(いわゆる通信)
●ソフトウエアの制作等
●国外に所在する資産の管理・運用等(ネットバンキングを含む。)
●国外事業者に依頼する情報の収集・分析等
●国外の法務専門家等が行う国外での訴訟遂行等
●著作権の譲渡・貸付け


4. 消費税課税方式の見直し
「電気通信利用役務の提供」については、「事業者向け電気通信利用役務の提供」と「消費者向け電気通信利用役務の提供」に区分されることとされました。


(1) 「事業者向け電気通信利用役務の提供」の課税方式
消費税法においては、サービスの提供を行った事業者が、当該サービスの提供に係る申告・納税を行うこととされていますが、電気通信利用役務の提供のうち「事業者向け電気通信利用役務の提供」(注1)については、国外事業者から当該役務の提供を受けた国内事業者が申告・納税を行う、いわゆる「リバースチャージ方式」(注2)が導入されました。


なお、経過措置により、国内事業者の事務負担に配慮し、一般課税の場合、課税売上割合(注3)が95%以上の事業者、及び簡易課税選択事業者(注4)につきましては、リバースチャージ方式の対象となる「事業者向け電気通信利用役務の提供」取引はなかったものとみなされます。


(2) 「消費者向け電気通信利用役務の提供」の課税方式
当該サービスの提供を行った国外事業者が申告・納税を行うこととなります。


なお、国内事業者が国外事業者から「消費者向け電気通信利用役務の提供」(注1)を受けた場合は、当分の間、当該サービスの提供に係る仕入税額控除(注5)を制限することとされました。


(注1):国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、役務の性質又は当該役務の提供に係る取引条件等から当該役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるもの(例:インターネット上での広告の配信)を言い、それ以外のものは「消費者向け電気通信利用役務の提供」(例:電子書籍や電子音楽の配信)と言います。


(注2):通常、サービスの提供者が消費税の申告・納税をするところを、サービスを受けた者が消費税の申告・納税をする方式を言います。


(注3):


(注4):中小事業者の事務負担に考慮して、基準期間の課税売上高が5000万円以下の場合、売上高のみから消費税の納付税額を計算する方法を言います。


(注5):消費税の納付税額は、課税期間中の課税売上高(税抜き)に100分の8を掛けた金額から課税仕入高(税込み)に108分の8を掛けた金額を差し引いて計算します。


課税仕入高に108分の8を掛けた額を差し引くことを仕入税額控除といいます。


5. 登録国外事業者制度の創設
上記4(2)のとおり、国外事業者から「消費者向け電気通信利用役務の提供」を受けた国内事業者は、当該役務の提供に係る仕入税額控除が制限されますが、国税庁長官の登録を受けた登録国外事業者から受ける「消費者向け電気通信利用役務の提供」については、その仕入税額控除を行うことができることとされました。


6. おわりに
今回は、国境を越えたサービスの提供に係る消費税の課税の見直しについて説明しました。


なお、今回の解説も、概略的な内容を紹介する目的で作成されたものですので、専門家としてのアドバイスは含まれておりません。専門家からのアドバイスを受けることなく、本情報を基に判断し行動されることのないようお願い申し上げます。


ご不明な点等ございましたら、お気軽に弊社までご相談下さい。


(参考文献)
 国税庁(平成27年5月)『国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等について』<https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/cross-kokunai.pdf>
 国税庁消費税室(平成27年5月)『国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A』

<https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/cross-QA.pdf>
 国税庁ホームページ

<https://www.nta.go.jp/index.htm>
 財務省パンフレット『平成27年度 税制改正』<http://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei15_pdf/04.pdf>