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2022.08.31

インボイス制度の留意点 実務編Part1 登録手続き

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1. はじめに

令和5年10月1日よりインボイス制度が始まりますが、すでに登録手続きを完了した事業者が、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」に掲載されています。また、現時点では、登録について検討中のフリーランスや個人事業者などの免税事業者の方もいらっしゃるかと思われます。
国税庁のホームページでは、令和4年度税制改正に対応した「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」が掲載されています。また、7月29日において、「消費税の仕入税額控除の方式としてのインボイス制度が開始されます」および「適格請求書等保存方式の概要 - インボイス制度の理解のために」の資料が更新されました。今回は、これらの内容を踏まえて、インボイス制度における登録手続きにおいて、確認が必要となる項目をご紹介いたします。


2. 登録手続きに関する確認事項

適格請求書発行事業者になるためには、登録申請書を提出する必要がありますが、国税庁のQ&Aその他の資料において、免税事業者の登録の要否、新設法人の登録時期等、以下の事項が掲載されています。

(1) 登録申請から登録通知までの期間(Q&A 問4)

登録申請書の提出の方法は、書面提出とe-Tax提出のいずれかの方法によります。登録申請書を提出してから登録通知を受けるまでの期間については、登録申請書の提出状況により異なります。
現時点における見通しについては、「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」によりますと、e-Tax の場合、約2週間、書面提出の場合、約1か月となっております。

(2) 登録の任意性(Q&A 問11)

「適格請求書等保存方式の概要 - インボイス制度の理解のために」の資料において、適格請求書発行事業者の登録を受けるか否かを判断する際のチェックシートが掲載されています。
適格請求書を発行できるのは、登録を受けた適格請求書発行事業者に限られますが、適格請求書発行事業者の登録を受けるかどうかは事業者の任意です。取引先が消費税の申告をする際に、仕入税額控除を行うための適格請求書を必要とするかを踏まえて、登録の要否を検討する必要があります。適格発行事業者は、販売する商品に軽減税率対象品目があるかどうかにかかわらず、取引の相手方(課税事業者に限る)から交付を求められたときには、適格請求書を発行しなければなりません。一方で、消費者や免税事業者などの課税事業者以外の者に対する交付義務はありませんので、顧客が消費者のみの場合等には、必ずしも適格請求書を交付する必要はありません。

(3) 新設法人等の登録時期の特例(Q&A 問12)

免税事業者である新設法人が事業開始(設立)時から、適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、設立後、その課税期間の末日までに、課税選択届出書と事業を開始した日の属する課税期間の初日から登録を受けようとする旨を記載した登録申請書を併せて提出することが必要です。
課税事業者である新設法人の場合については、事業を開始した課税期間の末日までに、事業を開始した日の属する課税期間の初日から登録を受けようとする旨を記載した登録申請書を提出することで、新設法人等の登録時期の特例の適用を受けることができます。

(4) 登録の取りやめ(Q&A 問14)

適格請求書発行事業者は、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」(以下「登録取消届出書」といいます。)を提出することにより、適格請求書発行事業者の登録の効力を失わせることができます。原則として、「登録取消届出書」の提出があった日の属する課税期間の翌課税期間の初日に登録の効力が失われることとなります。ただし、「登録取消届出書」をその提出のあった日の属する課税期間の末日から起算して30日の日から、その課税期間の末日の間までに提出した場合は、その提出があった日の属する課税期間の翌々課税期間の初日に登録の効力が失われることになります。

(5) 適格請求書発行事業者が免税事業者となる場合(Q&A 問18)

小規模事業者に係る納税義務の免除の規定により、基準期間(個人事業者は前々年、法人は原則前々事業年度)における課税売上高が1,000 万円以下の事業者は、原則として、消費税の納税義務が免除され、免税事業者となります。しかし、インボイス通達2-5より、適格請求書発行事業者は、当該規定の適用を受けず、その基準期間における課税売上高が1,000 万円以下となった場合でも免税事業者となりません。したがって、適格請求書発行事業者が免税事業者となる場合には、上記(4)に記載の「登録取消届出書」の提出する必要があり、課税事業者を選択していた場合には、「課税事業者選択不適用届出書」の提出が必要となります。


3. おわりに

今回は、国税庁のQ&Aおよび7月29日に更新された資料より、消費税のインボイス制度における登録手続きについて取り上げました。実務上の対応について、事業形態や取引関係を勘案し、事前に対応すべきポイントを抽出して、方針を決定しておくことが必要です。新たな制度への対応であり、準備の途中で新たな課題に直面する可能性もあることから、早めの準備が望まれます。

なお、今回の解説も、概略的な内容を紹介する目的で作成されたものですので、専門家としてのアドバイスは含まれておりません。個別に専門家からのアドバイスを受けることなく、本情報を基に判断し行動されることのないようお願い申し上げます。
ご不明な点等ございましたら、お気軽に弊社までご相談下さい。


(参考資料)

国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(令和4年4月改訂)

国税庁「消費税の仕入税額控除の方式としてのインボイス制度が開始されます」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/300416.pdf

国税庁「適格請求書等保存方式の概要 – インボイス制度の理解のために」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0020006-027.pdf

(令和4年8月28日アクセス)